フィンカ・サン・ブラスは貴腐化させることにより、糖分が非常に凝縮されたブドウの果粒の収穫を終えました。
(灰色カビ病としても知られています。) このカビに感染すると、一般的にブドウ畑は壊滅的な被害を被るので、ブドウ栽培者にとっては大敵の一つですが、(例えば、霧や露により、夜間の湿度が高くなり、逆に、日中の日照量が非常に多くなるなど)適切な気候条件が揃うと、ブドウの果粒に糖分が凝縮し、この糖分が高品質の天然スイートワインのベースになります。
この場合、ボトリティス・シネレアは上記とは違ったプロセスを経ます。それは、貴腐と言われ、貴腐が進むと、ブドウの果粒の水分が蒸発し、糖分やエキス分が凝縮していきます。 フィンカ・サン・ブラスのブドウ畑の一部(レケナ市に位置する)は、雨により形成された谷間の区画で、秋になると霧が発生しやすくブドウの貴腐化に適した条件を備えています。ブドウ栽培醸造の模範的なワイナリー、フィンカ・サン・ブラスの醸造家、ニコラス・サンチェス氏がここ数年暖めてきたこの特異なプロジェクトは白のスイートワインのリリースという形で、きっと今年実を結ぶでしょう。
過去数年の間、サンチェス氏は夜の湿度が最も高い区画のブドウを通常の収穫期に収穫せず観察を続けました。毎年ボトリティス・シネレアは姿を現しました。 このカビに感染したブドウは貴腐ブドウになり、これらのブドウの房は冬になってから収穫されました。収穫はこれ以上ないほどに丹念に行われました。
特に、天然のグリセリン含有率が高くなり(グリセリンによりワインはよりオイリーに、滑らかになります)、さらに果粒内では酵素が活性化し、代謝反応を起こし、ワインの物理化学的性質や味や香りの変化が起こります。
ニコラス・サンチェス氏は「今年は9月、10月にほとんど雨が降らなかったため貴腐化が遅れました。一部分は貴腐化せず、干しブドウ化しただけでした」と語ります。このような状況であっても、2012年以前に収穫されたブドウ(醸造され、樽熟成中で、中には醸造期間が4年になるものもある)により、「私達の最初の貴腐ワインを2014年中にリリースする可能性は高いです」と続けます。 ブドウの貴腐化は複雑な自然のプロセスによるものなので、コントロールできるものではありません。このように得がたい貴腐ブドウを収穫し、醸造するというのはエキセントリックに思えるかもしれませんが、貴腐ワインが一般的に造られ、飲まれている地域も世界にはあります。例えば、フランス、ドイツ、特にハンガリーは貴腐ワイン醸造の長い伝統があります。
貴腐ワインというカテゴリーで最も名高い銘柄はシャトー・ディケム(ボルドーのソーテルヌのシャトー)でしょうが、ハンガリーのトカイワインが貴腐ワインの代表格としてよく知られています。貴腐ワインはオイリーで滑らかなスイートワインです。芳醇で、蜂蜜やジャムの快い香りと味わい、すっきりした酸味、口に含んだときにボリューム、厚みがあります。スペインでは北部に位置するガリシアとナバラで貴腐ワイン醸造の試みが行われていますが、サン・ブラスのチャレンジは適しているとは言えない気候条件を持つ地域での醸造の試みということで、一層興味深いです。